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言われてみれば、単純で。

第1章 おれのきもちはフクザツで。


「えっと、じゃあ、まず
 
 丹羽先輩へ」

「うん」

「いつも邪魔をしてくれて有難う御座いました」

「邪魔だったの?」

「そう。知らなかったんですか?」

「知ってました、俺はキョーちゃんの邪魔してました」

「先輩は背が低いので もっと成長してください」

「まあ、そうですよね」

「部活をサボるのはよくないです」

「まあ、そうなるよね」

「でも結構楽しかったです」

「そうなの?」

「はい。

 後は…頑張って勉強して下さい」

「りょーかい」

彼女の特徴のある少し汚い字。
それを見せないようにか、ゆっくり、丁寧に書いてるつもりだろうが
やっぱりちょっと汚い字だった。


「もう卒業したら会えないと思いますが」

「会えないの?」

「そうですね。高校違うとこいくと思いますし 家も遠いですし」

「そっか。卒業式までまだ時間あるけどね」

多分、これは彼女に言ったんじゃなくて、自分に言い聞かせた言葉。
だって、寂しいでしょ。俺目の前にしてもう会えないって言うんだよ。
けろっとした顔して。

「で、あとは、…お元気で」

「うん。元気で生きるよ」

「そうですね。それが一番です
 勉強頑張ってください」

「キョーちゃんそればっかだね」

「それ以外に言いたいことないですから」

「そっか」

「藤崎キョーより。はい、私からの色紙です」

「ボロボロの結果の小テストだけどね」

「ちょうど捨てるとこ探してたのでいいゴミ箱がありました」

「俺、ゴミ箱じゃないよ」

「知ってますよ、丹羽先輩ですよね」

「そうです」


彼女の「丹羽先輩」という声ももうすぐ聞き納めになるのだと思ったら
少し寂しかったけど、なんというか、それを伝える勇気はない。

ただ、今だけは彼女の声が自分のものだけにしたくて。
だから、いっぱい話しかけちゃうんだと思う。

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