第21章 約束
三つの銃声、彼女にとってそれは予想外だっただろう。二丁の銃を持つアリスが二つの銃声の持ち主、ならば……もう一つは?
「姫様っ!?」
「あ……」
彼女が放った弾は目の前の男の命を奪うことに成功したのか、男が崩れ落ちる光景が視界に入る。しかし、もう一つの銃声が彼女を襲う様子はなかった。どういうことなのか?
アリスは辺りを見回す。ふと、自らの斜め後ろの物陰に男が倒れているのが見えた。
「そうか……もう一人、いたのね。でも、殺されてる……なら、一体」
「油断大敵ですよ、アリス様」
「その声は……」
彼女が前へと向き直ると、陰から現れたかのようにセバスチャンが姿を現す。その手に握られていたのは、拳銃。
「私があの男を殺さなければ、貴女は死んでいたかもしれませんね?」
「ありがとう……とでも言えば満足かしら?」
「気が強いのは嫌いではありませんが、たまには素直になって頂きたいものですね」
セバスチャンはクライヴへと視線を向け、軽く会釈する。挨拶に応えるように、クライヴもまたそれに習った。
「一体どういうつもり? しかも……一人?」
「ええ、一人です。私はほぼ貴女方と同じ女王からの命によりとある事件を探っています」
「……エンジェルドラッグね」
「是非、同行を許可して頂けませんか?」
「同行したい理由は?」
「一人でも多い方が、効率よく情報が集まるとは思いませんか?」
にっこり微笑む彼に、アリスは小さく「いいわ」と一言返事をするのだった。