第19章 願望
「アリス様、私をセバスチャンとお呼びください。その可愛らしい声で、駒鳥のようにね」
「……セバスチャン」
お菓子の甘い香りで、ただ狂わされているだけ。
「よく出来ました」
アリスの髪に、セバスチャンは軽くキスを落とす。
「アリス様、キスの格言をご存知ですか?」
「……何それ、急に」
「いえ、知らないのでしたら構いません」
ぽつりぽつり、心の中に灯る明かりをアリスは密かに感じていた。知りたくないような物を抱えてしまった気がして、その想いに蓋をした。
自らの目的を思い出しながら、それに囚われながら。
「優勝は私達のものですよ、アリス様」
「言ってなさい」
喧騒の中へと二人は飛び込む。二人の怒涛の追い上げに、屋敷中が悲鳴に満ちていく。怪しくも美しいハロィンの夜。ゲームの勝者は言わなくとも、誰もがわかっていた。
ゲームを終えたパーティー会場では、デザートを食べながら穏やかに談笑が行われていた。シエルは舌打ちしながらセバスチャンへと近づいた。