第19章 願望
「結局お前のとこが優勝したか」
「はい、残念ながら」
「……大人気ない」
「ふふ、背伸びをしている子供に言われたくありません」
「ガキか」
「さて、どんな願いでも一つ叶えて頂けるのでしょうか?」
「いや、ここはお前のじゃなくてアリスのだな……」
「いいんじゃないの? セバスチャンの願いを叶えてあげたら? シエル」
アリスは傍らにクライヴを連れ、二人の前へと現れる。その手には、セバスチャン特製のデザートの皿を乗せながら。
「アリス様、今夜のデザートは気に入って頂けましたか?」
「かぼちゃプリンだなんてシンプル」
「大量生産向きです」
アリスは一口、プリンを食べた。
「ところで、セバスチャンの願いって何?」
「私のですか? 気になりますか?」
「気になるからこうして尋ねに来たんじゃないの」
「坊ちゃん」
「わかった……いいだろう、なんでも願いごとを言ってみろ」
セバスチャンは咳払いをし、意を決したように強く主張した。
「猫を飼いたいですっ!!」
「……」
じとりと、アリスはセバスチャンを見つめた。シエルは真顔で彼を見つめた。何故かクライヴは、目を逸らした。
「シエル、あっちでエリザベスと一緒にデザートでも堪能しない?」
「そうだな。行くか」
「あの、坊ちゃん」
そこにセバスチャンはいない、いない。まるでそう暗示を自らにかけているかのように、そこにいたアリス達は完全にセバスチャンを無視して行ってしまう。
セバスチャンはぴくりと眉を動かした。
「猫……」
ハロウィンの夜は、こうして更けていった。