第12章 ●悪趣味の悩み
「……エルヴィン。
何か気になることがあるんなら、
何でも話してよ。」
凛の穏やかな声が耳の奥に入り込み、
取り乱していた脳内が少しずつ落ち着いてくる。
「私じゃ大した力にはなれないかも知れないけど
話聞くくらいならできる。
勿論、口外しない自信だってある。」
少し力強い語感になったのを感じ、
自然と凛の背中に手を回した。
「……ありがとう。
今日俺は君に心配を掛けてばかりだな。」
「ほんとだよ。
久しぶりにこんな一度に
エルヴィンの心配した気がする。」
ふて腐れたような声を聞いて、思わず頬が緩む。
仕事が関わって仲間や別兵団の兵士に
自分の行動を“危惧”されることは多くあったが、
“心配”されることは、今までに殆どなかったから
こうして凛がしきりに心配している
素振りを見せてくれることは、
不思議な気持ちがした。