第12章 ●悪趣味の悩み
「……で、何で悩んでるの?」
「いいんだ。大したことじゃない。」
凛を逆に押し倒すと、
不満そうな表情が目に留まり、
また自然と顔が綻ぶ。
「笑うタイミングおかしいからね?
こっちはエルヴィンが」
口早に話し始めた凛の唇を奪い、
発言を制止すると、
紡ぎ出される筈だった言葉と漏れ出した吐息が
同時に口内に潜り込み、
自分の感情がすぐに昂るのを感じた。
いくら余計なことを考えていたとしても、
こうして彼女と唇を重ねるだけで、
“まぁ、今は悩みなんてどうでもいい”
なんて、能天気な考えが浮かぶ。
それが良いことだとは思えないが、
悪いこととも思えないでいるのが実情だ。