第18章 苦難の中の力
『ねぇ総悟待って!どこ行く……ブッ!』
今日で何度目か分からない静止の言葉を叫ぶと、手を引いていた総悟がいきなり立ち止まり、私より少し広い背中に顔面から衝突した。
『突然止まらないでよ…』
強打した鼻をさすりながら抗議する。
すると、ふいに総悟が振り返り、真剣な瞳で真っ直ぐ見つめられる。
沖田「…無理やり連れて来ちまってすいません。でも、こうでもしねーと着いて来てくれねぇだろ?」
腕を掴む手に力がこもって少し痛い
『何を…そんなに焦ってるの?』
スッと視線が逸らされ、総悟が腕時計を見やる
沖田「…あと1時間だけ、俺に付き合ってくだせェ」
質問の返事になってないんだけど…
言葉のキャッチボールしようよ…
けど、
『分かった』
いつになく真剣な総悟の様子に、首を横に振ることはできなかった
『でも…その後で良いから…私の話も聞いてね』
沖田「分かってまさァ」
珍しく優しげな笑顔を見せた総悟に、思わず釘付けになる
沖田「なんでィ、人の顔ジロジロ見て」
『…いや、総悟のそういう顔初めて見たなぁと思って』
沖田「そういう顔?どういう顔ですかィ?」
『何て言うか…いっつもは余裕たっぷりな感じで笑うのに、今日はそうじゃないって言うか…』
沖田「あー…」
掴んでいた腕を離すと私に背を向けた
沖田「…まあ、てめぇの顔のことなんざよく分かんねェや。んなことよりさくら、あと1時間しかねぇんだ、そろそろ行きやすぜ」
そう言って道の先を歩く総悟
私も慌ててついて行く
『待って!どこに?!』
追いついた私を見た総悟が意地悪く笑って言う
沖田「着いてくらァ分かりまさァ」