第18章 苦難の中の力
『え…?』
名前を呼ぶ声に振り向くと、そこにいたのは私服姿の近藤さんだった
機嫌がいいのか、手を振り回すように振っている
『近藤さん!どうなさったんですか?』
近藤「いや、特に用があったわけじゃないんだが…休みが取れたもんで散歩がてら団子でも食いに行くかってことになってな」
『有給ですか…』
近藤「ん?ああ、何で分かったんだ?」
『…』
相変わらずニコニコと嬉しそうに笑う近藤さんをジト目で睨む
ふーん。
休んでも給料がもらえるなんて羨ましい
私なんて働いてもお金なんてもらえないのに
近藤「さくらちゃん?」
『え…あ、何でもないです!忘れてください』
訝しげな顔をしながら私の顔を見る近藤さん
危ない危ない。
ここ最近お金に触れる機会が無さすぎて金の亡者になりつつあるよ。
てか、そんなことより…
『あの…お休みって…他の2人も一緒ですか?』
近藤「2人?ああ!トシと総悟のことか!」
『あ、はい』
近藤「休みは俺と総悟だけだ。トシは屯所の方で仕事だよ。何か用事でもあるのか?」
『用事…そうですね。…今総悟はどこにいるんですか?』
近藤「総悟ならさっき厠に行くって言って…」
そう言って来た道を振り返った近藤さんの視線をたどる
すると、近くにあった茶屋から、栗色の髪を風に揺らしながら歩いてくる影があった
沖田「お、さくらじゃねぇかィ」
こちらに向かって軽く片手を挙げる総悟に同じように返す
今日の本題のうちの一つ
2人に返事をするために