第18章 苦難の中の力
『いってきまーす』
なんとかお休みの許可を得た私は財布だけを持って万事屋を出た。
今思えば、丸ごと1日休みを貰う必要は無かったかもしれない。
目的は2つだけ。
それなら、少し道草を食っても大丈夫だろう。
思い返すと江戸で買い物なんてした記憶がない。
あ、スーパーくらい?
『ちょっと遊んでみようかな...』
ポツリと呟き針路変更。
ターミナル付近の大通りに向かって歩みを進めた。
せっかくの休日だもん。楽しんで何が悪い!
それに本題の方は気が重いし...
『...よし』
暗いことばかりを考えているのも何なので、近くにあった小物屋の暖簾をくぐった。
店員「いらっしゃいませぇ」
煌びやかに着飾った店員の接客スマイルと繊細な小物たちが私を出迎える。
『う...』
見渡す限り蝶だの華だの...
目が...目がァァァ!
チカチカするゥゥゥ!
誰がグラサンを!長谷川さんを呼べェェ!
元いた世界では寝癖、すっぴん、赤ジャージという三種の神器を兼ね揃えていた私は、キラキラとした世界にいてもたってもいられず...
『バ〇ス!』
店員「あ...っ、お客様!?」
滅びの呪文を叫んで逃げた。
ふー...危なかったね。
ほんと危なかったよ。
あのままいたらあの店員巨〇兵とか出してきそうな勢いだったからね。
焼き払われるところだったからね。うん。
『...はぁ』
ダメか。
一人でああいう場所に入るのは未だに抵抗あるなぁ。
お妙ちゃんとかいればよかったのになぁ。
2度目の針路変更。
やはり道草はせずに本題を先に済ませることにした。
もう一度振り返り、顔をあげたその時。
「さくらちゃん!」
辺りの喧騒をもかき消す声で誰かが叫んだ。