第18章 苦難の中の力
銀時「はぁ?有給?」
突然の私の提案にキョトンとする銀さん。
『そう、有給休暇』
銀時「有給ってお前...元々仕事もねぇのになーにが有給だバカヤロー。毎日毎日休暇与えてやってんだろが感謝しやがれ」
『へぇ...?それはまたずいぶん長ーい夏休みね』
銀時「毎日毎日働いて金を数えるよりたまーに入った金を数える方が有り難みが分かるってもんだろ」
『たまーに入ったお金も月に1、2回だと楽しむ余裕も無くなるでしょうが!もうそこまで行ったら あれ、お金ってどうやって数えるんだっけ。親指って上だっけ下だっけ。あれ、一円玉十枚で何円だっけ...ってなるでしょうが!』
銀さんはどうしても私に有給を取らせたくないらしい。
まぁ、どうせ払う給料が無いから渋ってるだけだろうけど。
いいじゃん少しくらい。元の世界でも有給なんて最低限しか取ったこと無いのに...
『はぁ...分かったよ。有給は諦めるよ』
銀時「そーしろそーしろ」
『けど』
銀時「?」
ご飯のおかわりをしようとする銀さんの着流しの袖を掴む。
『今日一日休ませてください』
銀時「は?」
言われた意味を理解しないまま、銀さんが怪訝な顔をする。
銀時「さっき有給は諦めたって言ったろお前。休みって...」
『うん。給料はいらない。ただ、午前中から夕飯までの間お休みが欲しいの。少し行きたいところがあって...昼ごはんはもう作ってあるからチンして食べてね』
銀時「...」
『銀さん?』
着流しを掴む私の腕を取り、ジッと見つめる銀さん。
『え...っと』
銀時「分かった」
『...え?』
銀時「行きてぇとこに行ってこい。ただし」
『...』
銀時「寄り道しねぇで帰ってこい」
『は?』
私は、言われた意味がよく分からなかった。
『当たり前でしょ。誰が夕飯作るのよ』
銀時「...だよな」
そういった銀さんはパッと腕を離すと、空になった茶碗を持って台所に入っていった。