過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
「ここは今日憲兵団の新兵が警備してるらしいが・・・
それだけで安全性もクソもねぇって事だな」
リヴァイはすぐにナイルの相手をしていたミケに声を掛け、
近くにいた調査兵団兵士にエルヴィンへ異変を知らせるメモを
渡すように内密に指示を出した。
ここでパニックを起こしては収拾がつかなくなる。
話を聞いたミケも周囲を探るように神経を尖らせ、
酔い潰れているナイルを叩き起こそうと揺さぶったが、
師団長様は泥酔状態で一向に起きる気配が無かった。
三人は呆れたように溜息を吐いたが、
ナイルの持っているグラスを見た時
やっと抱いていた違和感の正体にナナシは気づく。
「随分変わった酒だと思っていたが・・・・
ナイルの飲んでいるやつに何か盛られていたようだぞ」
「何だと・・・っ!?」
それを聞いたミケはナイルのグラスを奪い取り匂いを確かめ、
ナナシは目視で他に何かを混入された飲み物が無いか探した。
ナナシは動植物の中に流れるエネルギーを見る事が出来るので、
毒や薬が盛られた皿があればそれを見分ける事が可能なのだが、
全ての物に盛られていては気づけないという欠点もあった。
以前、エルヴィン(実行犯はリヴァイだが)に痺れ薬を盛られた時、
知った欠点である。
周囲の飲食物を見回してみると、身分の高い人間が好んで飲む
お酒の一部にその痕跡が見えて舌打ちしたナナシは
すぐにそれをリヴァイとミケに伝えた。