過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
「そんなに胸や尻が触りたければ、そういう店に行け」
「俺はてめぇのが触りてぇっつってんだよ」
「その発言はセクハラだ」
「あぁ?馬鹿言え。俺のはセクハラじゃなくて
純粋な『お誘い』ってやつだ。エルヴィンのは犯罪臭の濃い
セクハラで間違い無いがな」
ナナシは一瞬『セクハラ』の定義がわからなくなったが、
リヴァイのも十分セクハラに当たるだろうと思い直す。
「いや、お主のも立派なセクハラ・・・・・」
途中で言葉を切ったナナシはある違和感に気づき、
周囲の気配を探った。
懇親会が行われているこの会場の外に、
兵士でも貴族でも無さそうな気配が挙動不審な動きを
みせているのを感じ取ったのだ。
いつも周囲の気配を探っている訳ではなかったが、
ナナシはこういうパーティが行われている場所は
襲撃されやすいと経験則でわかっていたので警戒を怠っていなかった。
だが、会場を取り囲むようにしている人数が襲撃には少な過ぎる・・・・。
言い知れぬ違和感に黙り込んでいると、
リヴァイが「どうした?」と怪訝な表情でナナシを見遣った。
まだ不確定要素ばかりあり過ぎだが熟練した兵士であるリヴァイに、
感じた人間の気配と違和感について語ると、
彼は難しい顔をしながら「きな臭ぇな」と呟いて
視線を会場へ投げる。