過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
視界の端でナイルの顔が青くなっているのが見えたが、
すぐに「おい」という不機嫌そうな声に意識を持っていかれたので、
視線を声の主に向ける。
眉間に紙が挟めそうなくらいの皺を寄せたリヴァイが、
凄い目でナナシを睨みつけていた。
「ミケに聞いたんだが・・・さっきおまえは二人に
胸やケツを触られてたらしいじゃねぇか・・・」
それが事実だとしてリヴァイが何故不機嫌そうにしているか
わからなかったので、取り敢えず手に持っていた料理を口に
運びながら首を傾げた。
「おい、食ってないで真面目に聞け」
話はちゃんと聞いているのだが、その態度が許せなかったらしい。
ちゃんと口に入れた物を飲み込んでから、
「そんな事もあったな」と答えると、リヴァイはナナシから
皿を取り上げ距離を詰めてきた。
「随分とサービス精神が旺盛じゃねぇか。
あの二人が触ったんなら俺にも触らせろ」
「その理屈がよくわからない」
「仲間外れは良くないって事だ」
男の胸や尻を触って何が楽しいのか・・・・と思った所で、
ナナシは今女性体なのだと今更ながら気づいた。
ついうっかり失念していて、
エルヴィンやミケに触らせるんじゃなかったと後悔する。
きっと二人は『女』だと誤解してしまったはずだ。