過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
「よし、事情はわかった!エルヴィンには俺からそれとなく
言っておいてやるから、大船に乗った気持ちで任せて欲しい!」
不安な気持ちしか感じないし、どんな事情がわかったというのか・・・。
完全に酔っ払っているナイルに「はぁ・・・」と曖昧な返事を
返していると、頭をポンポンと叩かれたので頭上を見上げた。
「あいつは昔から突然酔っ払う。放っておけ」
スンと鼻を鳴らしてそう言ったのはミケで、
ミケを認識したナイルは矛先を彼に変えた。
「おい、ミケ!エルヴィンの婚約者に触って怒られても知らねーぞ!
俺なんか挨拶も許されなかったんだからな!」
「あぁ、それなら問題無い。俺は普通に触るくらいいつもの事だ。
抱き締めるくらいならまだ何とかいける」
さらっと爆弾発言を落とすミケにナイルの顔が引き攣る。
その顔には「え?どういう事?」と書かれていて、
ナイルの反応の面白さに誂いたくなる気持ちが
ナナシにも少しわかった。
「何だ?知りたいのか?ナイル。これを知ると後戻りできないぞ?」
ふふん、と鼻で笑うミケの挑発にムッとしたナイルは
「おう!言ってみろ!」と虚勢を張って、内緒話が出来るように
ミケに耳を近づける。
ミケが何を言うのかナナシも気になったが、
突然頭をガシッと誰かに掴まれて身体を引っ張られた為、
聞くことが出来なかった。