過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
「・・・・・・上手くいってないのか?」
「え?」
「実はエルヴィンと上手くいってなくて、
ここにも無理矢理連れて来られたのか?」
「・・・はい?」
ナイルが何を言っているのかわからず首を傾げていると、
彼は「いや、辛いだろうから言わなくて良いぞ」と話を
勝手に進めた。
「あいつは昔から女にモテる癖に、相手の気持ちを考えないから
長続きしないんだ。珍しくエルヴィンがあんたに
べた惚れしてるっぽいから、ちょっと安心してたのに・・・
実はその裏で上手くいっていないだなんて・・・」
誰もそんな事一言も言っていないが、面倒なので訂正しないでいると
ナイルがどんどん一人でヒートアップしていった。
因みに彼の手にはもう何杯目かわからないお酒の入ったグラスが
握られている。
「あんた普段からあいつに『君は私の駒だ』とか言われてんのか?
それってあんまりじゃねぇか?さっきまでイチャイチャしていたのは
嘘だったのか?俺、エルヴィンの結婚式でスピーチしてやっても
良いとか思ってたのに・・・・」
心無しナイルの顔が赤くて目が据わっているように見えるが、
酔っ払っているのだろうか?
それにしてはいきなり酔いが回った気がする。
ナイルはお酒の入ったグラスを持ったまま、
力強くナナシに宣言した。