過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第58章 お人好しの生贄
自分はエルヴィンを『変人』とは言ったが、
『変態』とは言っていない。
エルヴィンが変態っていうのは、
・・・まぁ何となく想像がつくが、
始めから理解を求めていないとはどういう意味だろうか?
理解を求めなければ人間・・・出資者だったり部下だったりを
納得させる事が出来ないんじゃないか?
人見知りな部分は昔からあるが、ナナシの言っている事を
怪訝に思う。
ナイルの戸惑いに気づいたナナシは、少し眉尻を下げて
「あくまで私見ですが」と前置きする。
「エルヴィンは・・・目的の為ならば手段を選びません。
自分に賛同する同志は必要でも、自分の心を開く相手は
必要としていない気がします。多分心を開く事は必要ないと
考えているのでしょう。私情は時として邪魔ですからね。
ならば私も余計な私情を挟まず、『その時』が来るまで彼の傍に
いるだけです」
少し逡巡して、変人で偏屈な考え方を持つエルヴィンだと
わかった上で一緒にいるのだと言われた事に気づいたナイルは、
その考え方が理解出来ず唸る。