過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第47章 『絶世の美女』と嫉妬
淡い期待を抱いていそいそとシャワーを浴びて戻ると、
ベッドの上には既に寝息を立てているナナシがいて、
エルヴィンは一気に脱力した。
意識されていない上、無防備な姿を晒されて
どうして良いかわからなくなってしまう。
自分があれだけアプローチしているにも関わらず、
まるで意に介されていないとなると男としてのプライドが
ズタズタになった。
落ち込んでいても仕方ないので、ナナシを起こさないように
そっとベッドに潜り込んで、その身体を静かに抱き寄せた。
ナナシは抱き枕になる事を了承していたので
抱いても問題ないだろうと、自分に言い聞かせながら
戦々恐々と身体を寄せたが、彼が起きる気配は無い。
ナナシは壁際に寄りそちらを向いて眠っていたので、
少し残念に思う。
どうせならその寝顔を堪能したいところだが、
身体を反転させたらナナシが起きてしまうだろう。
大きく溜息を吐いて、ナナシの首筋に顔を寄せると、
仄かに石鹸の香りと甘い香りが漂ってきた。
思わずゴクリと喉を鳴らす。
これは理性との戦いだ
自分で墓穴を掘ってしまったと後悔するがもう遅い。
このままナナシを離して少し距離を取って寝るべきかと考えたが、
こんなチャンス滅多にないのでその考えはすぐに却下する。
この状況下になってエルヴィンは初めて
ナナシと一緒に寝ていたと思われる男達に尊敬の念を抱いた。
恋敵を褒めたくはないが、よく今の今まで手を出さずに
我慢していたと思う。
・・・・・・・いや、本当に手を出していないのか?