過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第47章 『絶世の美女』と嫉妬
暫しの抱擁の後、エルヴィンはナナシの手を掴んだまま歩き出した。
エルヴィンの考えがわからず、
かと言って話し掛けられる雰囲気でもなく黙って着いて行くと、
エルヴィンの私室に通され、ナナシの困惑は増した。
着ていたタキシードの上着を無造作に脱ぎ捨て、
タイを緩める彼を固まったまま見つめていると、
緊張しているナナシに気づいたエルヴィンが安心させるように
笑い掛ける。
「あぁ、すまない。その・・・今日は一緒に寝て貰えないだろうか?」
「え・・・」
エルヴィンの言葉にじりっと退くと、
彼は慌てて「そういう意味じゃなくて」と付け足した。
「今日はとても一人で眠れる状態じゃなくてね。
共にベッドで横になってくれるだけで良いんだ。
絶対に手を出さないから・・・・」
眉尻を下げて縋るような表情のエルヴィンを見ていると、
何故か此方が虐めているように感じて罰が悪くなる。
「・・・絶対に・・・何もせぬか?」
「・・・・・抱き締める以外は何もしない」
あれか?抱き枕的な扱いなのか?
それならまぁ慣れているから良いか・・・と思ってしまう。
自分は大分エルヴィンに絆され始めているなと考えながら、
ナナシは立体機動のベルトを外し始める。
それを見たエルヴィンは、
まさかすんなり一緒に寝てくれるとは思っていなかったようで、
少し驚いているようだった。