過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第47章 『絶世の美女』と嫉妬
エルヴィンは自室に向かう前にナナシの部屋に足を向けた。
漠然と「会いたい」と思ったのだ。
しかし期待して扉をノックしたものの、
何の返事も返ってこなかったので、
もうぐっすり寝入っているのかとエルヴィンは肩を落とした。
眠っている者を起こす程、鬼ではない。
きっと彼も疲れているはずだ。
薄暗い廊下をトボトボ歩き、月の光に誘われるように
窓の外へ視線を投げると、木の影に誰かがいる事に気づき
「こんな時間に誰が・・・?」と注視する。
もう消灯時間はとっくに過ぎているのに
何の為に外にいるのかと凝視してその存在を認識した瞬間、
エルヴィンは息を詰めた。
木々の合間にいるのはナナシで・・・
誰かと話しているようだった。
窓から身を乗り出して相手の姿を確認しようとするが、
木の影に隠れて顔が見えず歯噛みする。
わかるのは男という事だけだった。
一体誰がナナシと密会しているのだろうか?
らしくなく、舌打ちしてどす黒い感情に身を焼かれながら
エルヴィンは駆け出した。