過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第47章 『絶世の美女』と嫉妬
「モブリット~!どう?似合ってるかな?」
陽気な声でハンジが尋ねると、
モブリットは我に返って顔を赤くしながら目を逸らした。
「・・・お似合いです、ハンジ分隊長」
「そう?ありがとう!」
無邪気にお礼を言ったハンジにエルヴィンはこっそり溜息を吐く。
ハンジはモブリットの仄かな恋心に
気づいているのかいないのか・・・と。
ナナシに関しては壊滅的なエルヴィンだったが、
他人の機微には聡い。
「すまないがモブリット、少しハンジを借りるよ。
またいつものように振られてくるから帰ったら
ハンジを慰めてやってほしい」
「えー、今回は振られないかもしれないじゃん。
ナナシが『絶世の美女』にしてくれたんだから」
「外見が美女でも中身はいつもの君だからね。振られるよ」
「酷いよ、エルヴィン」
酷いのはハンジ・・・君だよ。
心の中でそう思いながら、エルヴィンは
「いや、酷いのは俺もか」と先程ナナシに取った態度を振り返る。
少しは妬いてくれただろうか?
しかし、酷い事でもナナシの気を惹くためならやらなければならない。
部屋を出る時もナナシの顔を確認出来なかった事が
悔やまれる。