過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第47章 『絶世の美女』と嫉妬
「感想は?」
「・・・・・・・・・・悪くない」
苦し紛れにリヴァイの言葉を真似てみても、
エルヴィンは気分を害する事なく満足そうに
「褒めてくれて、ありがとう」と微笑う。
「はいはーい、お二人さん。そろそろ時間なんだけど良いかな?」
ナナバが呆れた顔で手を叩いて注意する。
エルヴィンがナナシに何をしていたかは彼の大柄な身体が
邪魔をして、リーネやニファには見えていなかったようだが、
我らが団長が只ならぬ雰囲気を醸し出していたのはわかっただろう。
無駄にエロいフェロモンを撒き散らして、
ナナシの赤くなった顔を他人に見せまいとする計算高い男に
冷めた視線を向けながら、ハンジのエスコートをするように
ナナバは促す。
エルヴィンは名残惜しそうにナナシと身体を離すと、
ハンジに向き直りそっと腕を差し出した。
その様は紳士が淑女をエスコートする完璧な絵だった。
ハンジもナナバと同様、呆れた表情をしながら
エルヴィンの腕を取る。
いつもならエルヴィンは兵舎でハンジをエスコートしない。
だが、今日はいつもと違い見せつけるようにハンジの手を引いた。
理由は簡単だ。
自分が『絶世の美女』に仕立てた女に、
気になる男が傅く姿をナナシに見せつけて、
少しでも意識してもらい嫉妬してほしいのだろう。
悪趣味な男だとわかってはいたが、質の悪さが加わる。