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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第36章 模擬戦








それから団長室で訓練内容の話し合いをする事になったが、
ナナシは「部屋に忘れ物を取りに行ってから行く」と告げて、
輪から抜けた。


まさか、先程の模擬戦であそこまで
兵士が粘るとは思わなかったと嫌な汗が滲む。


大木を斬った時点で三人はバランスを崩すと踏んでいたのに
実際には二人しかバランスを崩さなかった。

流石は精鋭の調査兵団兵士というところか。

お陰で長期戦を良しとしないナナシは様々な戦法を
取らざるを得なくなった。



『柔剣』から始まり、
『攻式・陽炎』の多用、もっと言うなら風を操って
兵士のバランスも崩したし、自身の影を足場に動いていたりもしたので、
相当の労力を使ったのだ。




足早に森を抜け井戸の近くまで来ると、もう限界だった。


ナナシは激しく咳き込み血を吐いた。


メンテナンス不足からくる身体の不調は
日常生活においては問題なく過ごせるが、
戦闘となると問題が起きる。

ナナシの使う技は、神経を使い身体に負担が掛かるものが多いのだ。

体調が万全なら血を吐くこともないが、
今は無理矢理この世界に留まっているため
皺寄せが来てしまう。



「・・・こんな姿をあやつらに見せられぬな」


血で汚れた自身の手を見つめながら呟き、
エルヴィン達の事を考える。

この姿を見られたら問答無用で医者に連れて行かれるだろうが、
医者に見せてもどうにもならないとわかっているので
知られたくない。


あとどれくらいこの身体は保つだろうか、と考えていると、
見知った気配が近づいてきたので慌てて掌を握りしめ血を隠した。




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