過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第36章 模擬戦
「立体機動には長所と短所があり、
地面スレスレで小さい標的を確実に攻撃するのは
高度な技術だ。私はそれを逆手に取り、
敢えて地上に待機した。彼らは樹の上で次の手をどうするか
悩む羽目になり、樹を斬り倒されるという予想外の出来事に
対する反応が遅れ、攻撃される隙をつかれ敗北したという訳だ」
「成程、それが君の作戦だったという訳か。
しかし、あの瞬間移動のような動きは何だったんだい?
あれも技の一つ?」
「・・・あれは・・・・・」
逸らした話を軌道修正してきたエルヴィンに内心で舌打ちする。
爛々と輝く蒼い瞳を向けられ居心地悪くしていると、
いつの間に近くに来たのかリヴァイまでもが、
その技について言及してきた。
「おまえは、よくあの技を使うな。名前くらいあんだろ?
それとも言いたくねぇ理由でもあんのか?」
リヴァイには鋭い眼光を向けられ、
他の兵士からも興味の眼差しで見つめられてしまい、
渋々それについても話す羽目になった。
「『攻式・陽炎』という俊足の技だ。――以上」
「ふざけんなよ、てめぇ。それじゃあ説明になってねぇぞ」
ジリジリと詰め寄ってくるリヴァイを手で押し退けながら、
ナナシは兵士達に向かって言い放った。