過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第35章 薬
「そうだね・・・君が口移しの飲ませてくれると言うなら、
飲んでも構わないよ」
エルヴィンとしては、絶対あり得ないと考えて
言った台詞だったかもしれないが、
ナナシにとってはケツを掘られるよりマシである。
「言ったな?男に二言は無いぞ?」
「え?ちょ・・・・・・っ!?」
それからの行動は早かった。
小瓶の蓋を開けて薬を自らの口に含むと、
ナナシは椅子に座るエルヴィンに乗っかりその唇に
それを押し当てた。
抵抗するように開かない口を無理矢理こじ開け
呼吸出来ないように掌で鼻を塞ぎながら、
エルヴィンの中にそれを注ぎ込んだ。
息を止めていられる間にナナシを引き剥がしたいのだろう。
何とかしようと暴れているが、
ナナシは化け物の腕力でエルヴィンに貼り付きそれを阻止する。
その攻防にハッとしたリヴァイ達が二人を引き剥がそうとするも、
色々な意味で必死なナナシを退けることが出来なかった。
貞操を守るためというのもあるが、エルヴィンが仮説通り
『迅鬼狼』の子孫であるのかを確かめる必要があったのだ。
それにより、これからの自分の行動を変更せざるを得なくなるだろう。
入団期限に変わりはないが、
心臓の情報入手の他にエルヴィンの事も調べなければならない。
一体誰の子孫なのか、能力は受け継がれているのか、を。