第1章 ファーストキス
話ながらお店に戻り、あたしは帰るため、お姉ちゃんたちは二次会に向かうため、それぞれに帰る支度を始めた。
お姉ちゃんと二宮さんが何やら話し込んでいたから、あたしはできるだけ見つからないようにお店を出た。
来るときは明るかったから徒歩でも大丈夫だったけど、夜は暗くて道も分かりづらいから、電車で帰るかなー。
そう思って最寄りの駅に向かった。
すると、後ろから名前を呼ばれた気がした。
でも、暗くて誰かわからない。
足音が徐々に近づいてくる。
…………だれ……?
あたしは、構えた。
「……はぁはぁ、ちゃん……」
「に、二宮さん!?」
二宮さんがあたしの口を塞いだ。
「俺の立場を自覚しろって言ったのは、どこの誰よ笑」
「すみません…。で、でも、どうして二宮さん?」
「こんな、暗い夜道を女の子一人で帰らせる訳にはいかねーだろって、林に怒られた」
……お姉ちゃん。
「だから、俺が送るよ」
「えっ!い、いいですよ!!あたしは一人でも帰れますから」
あたしは、これ以上変に関わりたくなくてまた、歩き始めた。
「林、今日帰って来ないってさ」
「そうですか。あたしは、一人で大丈夫です。」
お姉ちゃん、帰って来ないのかい!
そっちの方がどちらかと言えば危ないでしょ。
「それに、二宮さんは明日朝早いんですよね?」
「あーそれ、嘘。」
「う、嘘!?」
「仕事はあるけど、昼からだし。」
あの、嘘つく必要性がないと思いますがね……。
「でも、お仕事あるなら休める時に休んだ方がいいんじゃないんですか?」
あたしが何気なく言ったら、急に黙った二宮さん。
「……ちゃんは、そんなに俺といるのが嫌なのか?」
……はい??
あ……………。
どうやら、あたしが気を遣って言ったつもりが逆に二宮さんを怒らせてしまったみたいですね。
「……ごめんなさい。そういうつもりで言った訳じゃなくて……。どこで誰が見てるか分からないのに、あたしが二宮さんと二人でいるのはどうかと、思って……」
あたしが弁解すると、二宮さんは途端に笑顔になった。
「なんだ、そんなことか。いいんだって、気にしなくて。俺のご厚意と思って笑」
「…………ぁ……ありがとう……ございます……」
はあー……。
こりゃ変な方向に行っちゃったよ……。