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霧が晴れる頃に

第4章 夏休み開けて


霧が晴れる頃に 95話 ミニデート

自転車を軽快に進め、近所のスーパー、旭店前にいる楓を見つける。
軽く挨拶をかわした後2人並んで店に入って行く。

平日の3時前、客は少なく、目に入るのはお年寄りか子連れの母親が数組いるだけだった。

「えーと…アイス…っと」
「仁、こっちこっち」
慣れないスーパーに戸惑う仁に楓が促す。
(あ~、親とかいないときあるんだっけな)
前にきいた雪原家の事情を少しだけ思い出しながら楓の後をついていく。

アイスは大勢で食べれる箱に入った物を1箱買うため、レジに行くかと顔を冷気の帯びるアイスボックスから上げると楓の姿が見当たらない。

首を少し左右に振り探せばすでに駆け寄って来る楓を見つける。
「なにしてたんだ?」
「ん~?仁があまりにもアイスを隅から隅までみてるんだもん、暇だったの」
(見られてたか…)
物珍しくて興味深く見ていたのだが…
仁は決まり悪い顔で苦笑いをし、流れを断つべくレジへ促す。

1番近いレジに並ぶこともなく入ると楓とレジの40歳程に見える女性が小さく同時に「あっ」と、声を上げる。

「叔母さん、ここのスーパーだったの」
どうやら楓の叔母さんらしく自然と話しかける。
「そうよ~、今月からなんだけどね」
楓にから笑いをしながらそういった後、いきなりその楓の叔母の目が見開く。

「楓ちゃんはデート中?彼氏出来たのね~」
「なっ!!これはその…」
そこまで言って楓は口ごもってしまう。
(そ、そうだけどっ!彼氏って…ち、違わないけど……で、でも…)
内心そんな事を思っている楓の気持ちをしってかしらずか、真っ赤になって押し黙ってしまった楓の変わりに彼氏と言われた仁が少し緊張したように
「こんにちは、霧ケ谷仁です、よろしくお願いします」
と、挨拶をする。
「よろしくね、楓ちゃんをよろしくね」
大人びた仁に釣られ、楓の叔母も大人な挨拶を返すと思い出した様にレジの仕事を始める。

「もう…」
楓が出した小さな声を聞きのがさなかった仁は「まぁまぁ」となだめ、それを見て楓の叔母(幸子さんというらしい)がなだらかに笑う。
昼下がりのスーパーに和やかな雰囲気が流れた。
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