第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 55話 9分後
「次は~、旭神社前~、お降りの方はバスが停車してからお立ちください~」
バスのアナウンスが流れる。
(まずは…)
と、慶や林にこの状況が見られてしまうのを回避するため楓を起こしにかかる。
唯一自由になっている右手でポンポン仁の肩に寄りかかる楓の頭を叩く。
…起きない
ならばと、白い頬をペチペチ叩いてみると、楓はゆっくりまぶたを持ち上げる。
「…ん………えっ、じっ…」
そこまで待ち、楓の口を塞ぐ。声を出さず起こしたのが無駄になってしまうからだ。
飛び起きた楓は今まで自分がどのような状況で寝ていたのか理解し、ついさっき…というかお化け屋敷を出た時に自覚した感情もあり、耳も顔も首まで真っ赤になってしまう。
そんな楓に気付かず仁は自由になった体を動かし降りるボタンを押してから楓に林を起こすように言う。
肩を揺すられて起きた林はスッカリ元気で言われるまでもなく慶の背中を強く叩き起こす。
「痛っ」
ぐっすり寝ていた慶は背中に感じる手の平型の痛みに唸るように声を漏らす。
仁は寝ている楓を見るのがなんだか悪いことの様に思えてきた仁自身の気を他の方向へ向かせるために考えていた、『いかに声を出させず起こすか』の作戦が上手くいって満足気だった。
「降りるぞ~」
真っ赤になっている楓。
妙に元気な林。
背中を抑えている慶。
そして上機嫌な仁。
中々いつもは見れない光景なのだが客観的に見る人はここにいない為、何事もなかったかのように4人はバスを降りた。