• テキストサイズ

霧が晴れる頃に

第8章 エピローグ


霧が晴れる頃に 148話 安らかに

「ふぁぁ…」
大きな欠伸を1つして、仁はスッカリ通いなれた通学路をゆるゆると歩いていく。

「仁、おはよ」
後ろからポンと背中を叩き、楓は挨拶してくる。

「きーりがーやくんっ!」
元気な声で駆け寄ってくるのはもちろん林。

「おらぁ!」
背中をバンと叩き、すぐに仁に肘打ちの反撃を喰らっているのはもちろん慶。

なぜだかあっという間に集合したいつもの3人に仁は少しため息をつく。

「お前ら…朝から元気だなぁ」
自分の髪をくしゃくしゃ撫でながら仁は呆れた様に言った。

「元気満々オロナミンC!」
「黙れ馬鹿」
CMのようにポーズをとる慶にやはり昨日のことは一生黙っておこう…と仁は決意した。

「ところで楓ちゃん、昨日は霧ケ谷君の家でなにしてたの?」

ピクリと仁と楓は一瞬動きを止めた。

「…林?なんで私が仁の家行ったこと知ってるの?」
「え、だって慶ちゃんが仲睦まじく会話する2人みて今夜はあつ…モガッ」
「バッ!林黙れ黙れ!」
慌てて林の口を塞ぐ…が…

「楓、なんか鈍器もってないか?」
「うーん…水筒なら」
「あ、あの…仁君?会話が怖いんですけど」

慶が不安そうに恐る恐る聞いてくるので仁は首の後ろをがしがしかいてめんどくさそうに言った。
「あー、気にしなくていいぞ、すぐ終わるから」
「こ、こわいこわい」

ぶるっと恐怖に震える慶は、次の瞬間、袖を何かに引っ張られるのを感じた。

「お、おはよう」
控えめに挨拶してきたのはこの前めでたく手を繋ぎあっていた相手だった。

「冬花、おはよ」
ニカッと笑い、頬をコリコリとかいて照れている動作をする慶は普段より少しだけ大人びて見えた、恐らく冬花に対する見栄からくる動作だろう。

「あっ、冬花ちゃん!おはよっ!聞いてよ、慶ちゃんってばね…」
絶好の話し相手を見つけたかの様に林がキャンキャン吠えるように話し、冬花は曖昧な笑みを浮かべて話を聞いている。

仁は己の周りを見回し、楽しげな4人をみて安らかな気持ちになっていった。
/ 162ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp