第6章 春へ…
霧が晴れる頃に 140話 当日
ホワイトデー当日 放課後
強盗事件から1ヶ月ということで朝会があったのだが、朝会の間、雨宮慶はブツブツと何かを呟いていたのを目撃されたとか。
霧ケ谷家でいろいろ話し合われ、ホワイトデーの放課後、伝説の木(仁の嘘)でお返しのチョコレート(1250円)を持ち、「俺と付き合って下さい」と言って告白する。と、決まった。
(失敗するわけないけどなー)
仁は相変わらず眠そうに頬杖をついてそんなことを考えた。
慶が朝からずっとソワソワソワソワしていたのに気付いた人も多く、バレンタインの冬花と慶のやり取りを見ていたクラスメイトは(あぁ納得)と、誰しもが心の中で頷いた。
「あぁぁぁ…もう放課後じゃん…」
この世の終わりかのように震えた声で慶は言う。
(いつもの爽やかさはどこへやら…)
慶がヨロヨロと近づいてきて仁に助けを求めるように言っても仁は頬杖をついたままそう考えただけだった。
「慶ちゃん、早く行きなって、約束の時間まで4分しかないよ?」
「大丈夫よ、絶対告白が成功する楠木の下だもん。伝説の木よ?」
林は慶を急かし楓はしれっと嘘をつく。
時間はない、呼び出した相手が遅刻するのは最悪だ。
冬花はHRが終わると誰にもばれずに静かに教室を出て行った。
「じ、じん」
慶が弱々しい声で言う。
「なんだよ」
「俺の背中を押してくれ」
「物理的に?」
「おう、頼む!」
そういわれ、仁はゆっくりと立ち上がった。
「っし…せーのっ!」
バチーン
「いでぇぇええええ!!!」
目一杯力を込めて放たれた平手は慶の背中に赤い紅葉を付けた。
15分後…
仲良く手を繋いで帰ってきた2人を拍手で迎えたのだった。