第6章 春へ…
霧が晴れる頃に 125話 2月14日
2月14日、朝、暖かくなってきてやっと寒い冬が終わると登校する生徒たちは嬉しそうだ。
やはり人間、寒いときは外に出たくなくなる。それが暖かくなったいま、登校中に見かける人の顔ぶれが少し変わった気がした。
今朝、ニュースでは人間がどのくらいの衝撃を受けると気絶するかとか、強盗がコンビニを襲って結局2~3万円だけとって逃走しているとか。
ノーベル賞の受賞者の発表なんてのもあった。
仁の知識の2割はニュースから得たものだ、残りのほとんどは本だ。
そんな知識を吸収しまくっている仁でもずっと昔からわからないことがあった。
(バレンタインデー…ってなんでチョコレートなんだよ…果物とかじゃだめか!?)
チョコレートを渡す、しかも女から男に渡す国は日本しかない。
他の国では男から女へ花や肉を送る日だ。
まぁ、国の文化をどうこういうのはおかしいが、仁が理屈にかなわないことを言うのは珍しい。
理由は仁が甘いものが苦手だからだ。
小学校の頃、ほとんど女子との関わりなどなかった仁だが、なんだかんだ言って毎年数人から(楓は甘くないクッキーをくれていた)しっかりチョコレートをもらっていた。
しかし、仁がこれを食べ切るのに、どれだけ苦労したかを彼女たちは知らない。
そんなことを悶々と考えているといつのまにか教室にたどり着く。
入るとクラスの雰囲気はいつもと違った。
女子はにこやかにチョコレートの交換を行っている。別段いつもと変わらない。
しかし、いつも走り回っている男子は妙に大人しく窓際で外を見るように突っ立っているし、馬鹿騒ぎをしている男子は神妙な顔で遠くを見ている。
バレンタイン当日に良くあることだ。
『貰えるか、貰えないかで男の価値が決まる』
少なくともここにいる男子のほとんどはそう考えている。
男子は大人しいながらもチラチラと女子を見ていた。それぞれ目当てがいるのだろう。
そんなことを考えていると慶が入ってきた…