第4章 夏休み開けて
霧が晴れる頃に 102話 理解
「ばいばーい!!またきてねー!!」
元気に別れの挨拶をする林に夜なんだからと、たしなめてから控えめに挨拶を済ませる。
「じゃ、俺向かいだから!じゃあな!」
慶も手短に挨拶をし、爽やかに去って行った。
「んじゃ、行くか」
仁が自転車にまたがり楓を促すとなぜだか楓はなかなか自転車に乗ろうとしない。
仁は聞こえているのか?と、楓の前で手を上下に振ると意を決した様に口を開いた。
「…あ…歩いて帰ろ…?」
上目遣いで頬を紅く染めた楓からこぼれ落ちた言葉はゆっくり帰ろうとのお誘いだった。
(…可愛い…な)
内心、慶や林がしれば大変な事になるであろう事を思いながらも仁は見事なポーカーフェイスで少しだけ微笑む。
「おうっ!」
暗い夜道に、花を咲咲かせて話す男女がいた。
「林の弟達かわいかったな~」
「ああ、やっぱ霙と似てたな」
「私、弟欲しかったな」
「そう、俺は妹が欲しかったかな」
「またこようね!」
「ああ、そこそこ懐かれたしな」
「次はゲームの特訓して挑戦状をたたきつけてくるんじゃない?あはは」
「じゃあ練習しとくかな、はは」
幸せそうに話す楓につられて仁の顔も綻ぶ。
仁の笑顔を見ながら楓はふと、考えた。
(中学に入ってから良く笑うようになったね、それは凄く嬉しい事だし楽しいってこと…でも、手放しで笑う事はないなぁ…いつもどこか冷静…なんで?)
思考を巡らせているといつのまにか進むペースが遅くなり少しだけ仁と距離が離れて…といっても1mもないのだが、それまで互いの熱を感じる程の近さで歩いていた2人にとっては離れてしまい、ハッと楓は気付きすぐ仁に追いつく。
不思議そうに楓を見る仁に何でもないと告げる。
(まぁ、一緒にいればきっとわかるよね)
そう結論付けた。補足として付き合ってるんだし…と付け加えれば心の中で唱えただけだがやはり少し顔に熱が篭る。
「全部わかってあげられる様に頑張るね」
聞こえるか聞こえないか、とても小さな声で呟いた楓の言葉を知ってか知らずか…仁はまた微笑んだ。