第35章 -冬シチュ三部作③-(青峰/宮地/木吉)
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((4日前…自宅))
「ただいまー!」
「おかえりなさい。」
「すみれー、見て見て♪
今日、可愛いの見つけちゃった。」
家に帰ってきたお母さんが、
嬉しそうに紙袋から何かを取り出す。
「ほら♪クリスマスツリー!
可愛いでしょ?」
あれ?コレって…
「小さいけど、ちゃんと光るのよ。」
「コンビニで買ったの?」
どこか自慢げに
ライトを付けるお母さんに聞くと、
お母さんはすかさず否定した。
「こんな可愛いの、
さすがにコンビニにはないわよ。
駅前の本屋さんの隣の雑貨屋さん!
すごい可愛くて一目惚れよ。」
お母さんが買ってきたツリーは、
大輝がわたしにくれたのと、
まったく同じものだった。
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大輝はコンビニで”ついでに”買ったと
言っていたけど、
たぶん本当はあの雑貨屋さんで、
わたしに買ってくれていた。
はじめのうちは、
なぜ帰り道を変えるのか
わからなかったけど、
あのクリスマスツリーが
まだ置いてあるから、
大輝は本屋さんの前を避けているのだ。
わたしのために、
普段なら大輝が絶対入らないお店で
プレゼントを買ってくれたと思うと、
本当に本当に嬉しかった。
コンビニで買ったんじゃないと
知っていることを大輝に言って、
大輝の照れた顔を見たい気もするけど、
それをしちゃったら、台無しだ。
やっぱりこのことは、
わたしの心の中に
大切に閉まっておこう。
「すみれ?なに黙ってんだよ?」
「いたっ…‼︎もう!」
わたしが黙ってしまうと、
大輝はいつも少しスネたように
わたしのおでこに
痛くないデコピンをする。
「何考えてんだよ?オレといるのに。」
…‼︎
なんだか今日は大輝がかわいい。
クリスマスムードはまだ残ってたのかな。
「大輝のこと考えてたんだよ?
うぅ…やっぱり寒いっ!」
わたしは手を繋いだまま、
大輝の腕にギューッと抱きついた。
「くっつきすぎだろ!」
「じゃあ、離れてもいいの?」
「…‼︎…しょーがねーから、
このままでいてやるよ。」
ふふ…素直じゃないなぁ。
でも、オレ様な大輝のために、
そろそろ折れてあげようかな。
「やったぁ♪ありがと。」
「…おう。」