第4章 再会と離別を同時に
「ごめん…なさ…っ…この人は私の…恩人…な、の…」
「ウェンディ! アンタ、治癒の魔法を使ったの!?
その力を無闇に使ったら…ウェンディ!!」
治癒魔法を使ったからなのか、精神的なものなのかはわからない。
ウェンディは気を失ってドサリと倒れてしまった。
「な…何でお前がこんな所に…」
楽園の塔であった事がナツの頭の中でフラッシュバックする。
エルザを泣かし、
かつての仲間を殺そうとし、
アギトを巻き込んだ事が…
「ジェラァァアアアアル!!」
ナツは怒りを露にし、拳に炎を纏う。
しかしジェラールは何も言わず、無表情で衝撃波を放った。
「うああっ!」
「ナツ!」
ナツは壁に突き飛ばされ、瓦礫に埋もれてしまった。
「相変わらず凄まじい魔力だな、ジェラール」
ジェラールの圧倒的な強さに口角を上げるブレイン。
しかしジェラールはブレインの方を向くと、バッと手を横に翳した。
「なにっ!?」
ブレインの足元が脆くなり落下してしまった。
ハッピーは恐怖で震えながらウェンディを庇う。
ジェラール本人はと言うと、ハッピーは愚か、眠っているミッドナイトに見向きもしなかった。
そのまま出口へと歩き出す。
だが、ピタリと足を止めた。
「…アギト、」
ジェラールの視線の先に眠っているアギトがいた。
「…アギト」
アギトの前髪を避け懐かしそうに見つめる。
そのままアギトの肩を担ぎ、今度こそ出口へ行ってしまった。
「ジェラール!」
瓦礫に埋もれていたナツが出てきた。
勿論その頃にはすでにジェラールとアギトの姿はなかった。
「何処だ!」
「行ったわ 彼も連れてね」
「アギトを!? あんにゃろーっ!」
ナツは今にもジェラールを追い駆けそうになる。
しかしそれをシャルルが止めた。
「アイツが何者かとか関係は知らないけどね、今はウェンディを連れて帰る事が重要でしょ」
「っ、」
今すぐジェラールとアギトを追い掛けたい。
しかしシャルルの言い分も正しいのも事実だった。
「エルザを助けたいんでしょ!!」
「わかってっんよ!! 行くぞ、ハッピー!」
「あいさ!」
ハッピーがナツを、シャルルがウェンディを持つ。
毒を受けたエルザを助ける為、先を急ぐ。