第8章 “甘恋”と“嫉妬”
「蓮:シャワー浴びておいで。風邪ひいちゃうから。」
『……うん。』
蓮は、公園から私を家へ連れ帰り、びちょびちょの私に声をかけた。
まだ消えない。さっきの雷のこと。
「蓮:とりあえず、家、帰ろう。このままじゃ風邪ひいちゃうよ。」
雷雨に怯えていた私の元に来てくれた蓮。私を落ち着かせてから、帰ろう、と言ってくれた。
『うん。』
「蓮:詩織、もう大丈—ドシャァァン—」
おそらく、もう大丈夫?、と聞こうとしたのだろう。でも、その言葉を遮るほどの雷が、すぐそばの木に落ちた。
『っ…、ぁ…』
怖かった。ただでさえ雷雨で怯えていたのに、すぐそばにその恐怖の対象である雷が落ちたのだから。
本当は叫びたかった。でも、そんな叫びも出せないほど、怖かった。
『っ、あ、はっ、はっ、っ…』
苦しい、怖い。
母を亡くした雷雨というトラウマに、すぐそばに落ちた雷というトラウマが重なってしまった。
これから私は、雷雨になるたびに母を亡くした記憶が蘇り、雷の音を聞くたびにすぐそばに落ちたことを思い出すだろう。
「蓮:——。」
蓮が何か言ってる。でもなんて言ったのかわからない。雷の落ちた気から目が離せない。
怖いのに、恐ろしいのに、目を逸せない。
「蓮:詩織、行くよ。」
そのまま蓮に手を引かれ、家へ連れ帰られた。
そして今にあたる。どうしてこんなに不幸が重なるのだろう。神様は私をどうしたいのだろう。
『ごめん、お待たせ。』
「蓮:うん。」
「蓮『……』」
少し気まずい沈黙が流れる。たぶん、さっき雷が落ちた木のことだろう。お互いに気にしちゃって、なんともいえない雰囲気になる。
『て、テレビ、見よっか。ちょうどそろそろ“甘恋”始まるし…』
「蓮:そうだね。」
『あっ!そういえば、クッキー!』
「蓮:あ…、そうだった、忘れてた。」
『はい。あ…、ちょっと雨の湿気にやられてるかも。』
「蓮:いや、大丈夫。さんきゅ。」
『どういたしまして。』
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ドラマの主題歌が流れ、“甘恋”が始まる。
“私とキミの甘い恋”は、主人公・絵里(演・赤原なぎ)が、学校の人気者・遥斗(演・蓮)に恋をしていて、学園ものの恋愛ストーリー。前回は、教室で絵里が遥斗に想いを伝えたところで終わった。ちなみに、今日は4回目の放送だ。