第10章 夜の終わりは朝の始まり
どれくらいの時間が経っただろう、眠ることをようやく諦めた私は目を開いて手元の時刻を確認する
寝返りを打つと真っ白に染まった視界、ふわりと肌に触れる暖かさはどれも本当に真っ白で、やっぱりホテルみたいだ
———俺と一緒に居たいから、居てくれてるんだと思いたい、
少し前まで戯けていたくせに、急にあんな顔するんだもん、
冷めやらない熱がまだ全身に残って、逆上せたように火照る顔を冷やしたくてシーツの冷たい場所を探す
枕も布団も私の知らない香りがする、ただそう思って寝てしまいたいのに
頬を擦り寄せた時に感じた彼の香りだと気付いてから、眠気なんてすっかりどこかへ行ってしまった
静かに鍵を掛けて以降、リビングからは物音ひとつ聞こえない
彼はちゃんと眠れているみたいだ、きっと沢山気を遣わせてしまったから、そう思うとほっとするような、少しだけ悔しいような、自分でも戸惑うような感情が芽生えて
「・・様子を、見るだけ」
言い聞かせるように小さく呟いて、冷たい床にそっと足を付ける
音を立てないように細心の注意を払いながら鍵を開けドアノブに手を掛けた
廊下から覗いたリビング、柔らかいオレンジの間接照明がぼんやりと部屋を照らしている
真っ暗にしていないのはきっと私への配慮、そう思うだけで胸の中が甘い音を立てる
恐る恐るソファに近付くとすーすーと規則正しい寝息を立てるあどけない顔
ちゃんと休めていることへの大きな安堵と、それを少しだけ上回る落胆を感じて苦笑が漏れた
「眠れてて、よかった」
すぐに引き返す予定だったのに、足がそれを拒否するように動かない
普段の隙の無さからは想像もできないくらい無垢な寝顔に思わず見惚れてしまう
起こさないように静かに腰を下ろすと、ふわふわのカーペットが素足に気持ちがよくて
こんなに近くで顔を見る機会なんてなかなか無い、閉じられた目やふわふわの髪をじっと見つめると愛しさが込み上げた
「・・本当はね、ここに来たこと、」
ちょっと後悔してるんだ、小さく小さく聞こえないように呟いて、落とした視線が借りた服の裾を捉える
「私最近ね、気になる人ができたの」
穏やかで、たまに意地悪で、一緒に居るのがとても落ち着く人、
言葉にすると気持ちが少しずつ整理されていくようで、寝ている彼を前にぽつりぽつりと小さく続けた
