第9章 鍵を掛けておやすみ
給湯器のアナウンスがメロディを奏でる、待ってましたとばかりに手を伸ばした彼女を制するように、俺は透明なその瓶を掴み取った
「あーこれはダメ、勿体ない」
「え!?せっかく買ってきたのに・・っ」
「当分ここに飾っとくんで」
それじゃ意味ないよ、引き下がらない事を決めている丸い瞳が俺を睨んで、瓶を奪おうと俺の隙を狙っている
「今日はあっち使いましょうよ」
今日は、の部分を強調するように声を出すと顰められたその眉、俺の指さす先を見た彼女が怪訝そうに首を傾げた
「私のより、塚内さんのがいいの・・?」
何言ってるんだ全く、呆れた溜息が漏れそうになるのを何とか堪えて笑顔を作る
花の形をしたそれが彼女の手に鎮座するのを見て、憎たらしい桃色を俺は睨みつけた
「コレはまだ使いたくない、でも常備されてる入浴剤は味気ない」
間を取ってそれでどうです?いい考えでしょう?、必死さが悟られないようにへらりと眉を下げると、彼女が悩んだように視線を巡らせた
「・・でも真さんにお礼と感想伝えたいしなぁ」
「全然、伝えたらいいと思いますよ」
「え、だって今日使うんでしょ?」
「ん?だから今日使った感想を、」
驚きに言葉を失っているその様子に、やっと合点がいく
じわじわと染まる耳を隠すように彼女が髪を流した
「わ、私は入らないよ・・!?」
「なるほど、そう来ましたか」
全く、手の掛かる人だ、心の中でそう悪態をついてみても、みっともなく頬が緩んでいく
好きな人との応酬は長ければ長いほどいい、当然だ
「俺だけ入れって?」
「だってここは・・!」
「貴女が入浴もできず窮屈な格好で一晩過ごすのを横目に」
ゆっくり風呂に浸かってリラックスしろと?、冗談じゃない、本心のままに思い切り顔を顰める、彼女にはこれが一番効くはずだ
「めぐさんが入らんなら、俺絶対入りませんよ」
「着替えもない、し」
「やって下さいよ、彼シャツ」
「か、彼じゃないもん」
「あれ、違いましたっけ?」
「えっ・・違う・・よね・・?」
「っはは!俺に聞かんで下さいよ」
めぐさん次第なの分かってるクセに、ずるいなぁ、彼女が折れるまであと数秒
葛藤するその表情をまじまじと見たい俺は、視線を合わせるように彼女を覗き込んだ