第8章 ショコラ・エピセ
白い蛍光灯に煌々と照らされた店内、一日中同じように明るいはずなのに、夜は特に明るく感じる
いくつかの日用品を鮮やかな色のかごに入れながら、私は先ほどの彼を思い返していた
———塚内さんと居ったけん
———俺ずっと待っとったのに、
私を責める視線、受け入れられないと言いたげに結ばれた唇、声をあげて泣き出しそうなほど取り乱していた彼の姿が頭から離れない
「あんな顔、初めて見た・・」
強引に私を閉じ込めた震える腕、耳が触れた胸からはこれ以上無いくらい速い音が聞こえて、
「めぐさん、俺腹減りました」
なんか買っていっていいです?、めぐさんは塚内さんと食べたかもしれませんけど、恨めしそうにじっと見つめられると心が痛くて
その甘い痛みに戸惑いながらも受け入れたい自分が居るのを否定できなくて、わからなくて、胸が苦しい
「・・食べてないよ、私もお腹空いちゃった」
ちょっと来てくれる?、軽く手招きをするとお弁当コーナーを見ていた彼が不思議そうに歩み寄る
背伸びをして彼の額に触れると、大きく見開かれた琥珀色の瞳が蛍光灯を反射した
「野菜、摂ってないでしょ」
「び、びっくりした・・」
「お米と調味料は、お家にあるかな、?」
カット野菜や卵、使えそうな食材をかごに入れていく私を彼が呆然と見つめる
子供のように緩くはにかんだ口元を手で隠しながら、重くなってきたかごを私から取り上げた
「・・大した物は作れないけど、」
私のせいで、素敵なレストラン行けなかったから、込み上げる申し訳無さのまま彼を見上げるとその眉が切なく下がる
「でも、あんまり期待しないでね?」
「・・めちゃくちゃ楽しみです」
すみません俺、今気持ち悪い顔してますよね、そう言ってバツが悪そうに俯いた顔は首筋まで赤く染まっていた
「ふふ、可愛い」
「悪い人だなぁホント」
デザート何にします?、誤魔化すように棚を物色し始めた彼の姿が可笑しくて、一緒に居られるのが私はきっと嬉しくて
「選んでくれる?」
同じのにするから、私がそう言うと彼が悔しそうに赤い顔を顰める
悩ましげに吐かれた短い溜息は、とびきり甘いクリームのように私の心を掴んで離さなかった