第16章 雄英文化祭編
爆豪が面白そうに目を細めていたからだ。
「……あんなに、なんだよ?」
「……言わない」
「おい、途中でやめんじゃねぇ」
「自分で考えたらどう?」
「チッ……」
文句を言いながらも、爆豪の口元には笑みが浮かんでいた。
どうやら、彼女が困惑していること自体が、ずいぶんと楽しいらしい。
「……あー、なるほどな」
「何が?」
「俺のこと意識しすぎて頭回ってねぇんだろ」
「…………は?」
今度こそ、おもちは足を止めた。
ゆっくりと彼を振り返る。
「……勝己くん」
「おう」
「少し黙っていてもらえる?」
「ハッ!図星かよ!」
「違うわ」
「顔、赤ぇぞ」
「夕日のせいよ」
「もう沈みかけてんぞ」
「……っ、この……!」
思わず言葉に詰まった彼女を見て、爆豪は堪えきれないように笑った。
普段なら、こんなふうに人をからかって楽しむ姿は、そうそう見せない。
けれど今は、明らかに機嫌がいい。
自分の隣を歩く彼女が、いつものように涼しい顔で受け流せずにいる。
それが、たまらなく嬉しかった。
何でも一人でこなし、誰にも弱みを見せず、相手の心まで見透かしたように振る舞う女。
そんな彼女が、自分の前では少しだけ調子を狂わせている。
それだけで、どうしようもなく満たされる。