第16章 雄英文化祭編
文化祭当日。
雄英高校の校内は、朝からいつもとは違う熱気に包まれていた。
廊下には飾りつけが施され、各クラスが準備してきた出し物の最終確認に追われている。普段は賑やかな校舎が、今日はどこか浮き足立っていた。
そして、A組のライブステージも、いよいよ本番を迎えようとしていた。
「緑谷、まだ来ないの!?」
舞台袖で、芦戸がそわそわと入口を振り返る。
「連絡は来てる!もうすぐ着くって!」
切島がスマートフォンを確認しながら答えた。
「もうすぐって、もうすぐ本番なんだけど!?」
「落ち着け、芦戸。あいつなら間に合わせるだろ」
爆豪はドラムセットの前で腕を組み、苛立たしげに舌打ちした。
「つーか、遅刻ギリギリとかふざけてんのか、あの馬鹿……!」
「まあまあ、爆豪くん。デクくんにも事情があるんだろうし……」
麗日が宥めるものの、彼女自身も落ち着かない様子でステージのほうを見ていた。
その隣では、八百万が何度も衣装の裾を整えている。
「……大丈夫でしょうか。練習どおりに演奏できるか、少し心配になってまいりましたわ」
「八百万、さっきから同じところを五回くらい直してるよ」
耳郎が指摘すると、八百万ははっと手を止めた。
「そ、そうでしたか……!」
「俺も、なんか手汗やばいんだけど……」
上鳴はギターを抱え直し、落ち着かない様子で指を動かしていた。
「おい、上鳴。まだ始まってもいないぞ」
常闇はいつものように落ち着いた声音で言ったものの、ギターのネックを握る指先が、普段よりわずかに強張っている。
「常闇も、さっきからずっとチューニング確認してるじゃん!」
「……万全を期しているだけだ」
「いや、絶対緊張してるって!」
「上鳴。貴様の口を塞ぐべきか?」
「すみませんでした!」
いつもどおりのやり取りが繰り広げられる中、耳郎だけは笑う余裕もなかった。
「……やばい」
ぽつりと呟き、冷や汗を浮かべる。
「やばい、やばい、やばい……。本当に本番なんだよね。これ、失敗したらどうしよう……」
「耳郎、しっかりしなよ!」
芦戸が励ます。