第16章 雄英文化祭編
「しかもエリちゃんのこと、めちゃくちゃ大事そうに抱っこしてるし……。夢に出てきそう!」
「おお……確かに、すげぇ絵になるな!」
切島も感心したように声を上げかけ、慌てて自分の口を塞いだ。
「……やべ。静かにしねぇと」
「そうそう。起こしたら悪いからね」
麗日は小さく笑いながら、二人の様子を見つめた。
彼女の目に映るのは、ただ綺麗な寝顔だけではなかった。
エリが袖をぎゅっと握りしめているのに気づいているのか、おもちはその手を無理にほどこうともせず、むしろ逃がさないようにそっと腕を添えている。
エリが安心して眠れるように。
たとえ自分まで眠ってしまっても、その小さな身体だけはしっかりと守れるように。
「……優しいなぁ」
麗日は、胸の前でそっと手を組んだ。
「おもちさんって、いつも落ち着いてて大人っぽいけど……こういうところ、本当に優しいよね」
「うん。エリちゃん、すっごく安心してるもんね」
梅雨は穏やかに頷いた。
「エリちゃんにとって、おもちちゃんは特別な存在なのね」
「……特別、か」
少し離れたところで聞いていた轟が、ぽつりと呟いた。
彼は、エリの小さな手が彼女の袖を握りしめていることに気づいていた。
離れたくない。
目を覚ましたときにも、そばにいてほしい。
そんな気持ちが、言葉にしなくても伝わってくる。
轟は視線を上げ、おもちの寝顔を見つめた。
普段の彼女は、自分のことをあまり話さない。どこか達観したようなところがあって、こちらが気にかけるより先に、いつも周囲の人間のことを見ている。
だからこそ、こうして誰かに心を許している姿を見ると、不思議な気持ちになった。
「……いい顔してるな」
素直な感想だった。
しかし、その一言を聞いた爆豪の眉が、ぴくりと動いた。
「……テメェは何をしみじみ見てやがる」
「?寝顔を見ているだけだが」
「それを聞いてんじゃねぇ」
「どういう意味だ?」
「自分で考えろ、半分野郎」
「……?」
轟は本気でわからないという顔をした。