第16章 雄英文化祭編
耳郎は目を輝かせ、ドラムセットのそばまで歩み寄った。
「ちょっと、何それ!めちゃくちゃ上手いじゃん!リズムも安定してるし、フィルインも自然だし……いつから叩いてないの!?」
「知らねぇよ。昔やってただけだ」
「昔やってただけで、あれ!?」
「才能の暴力だろ……」
瀬呂が呆然と呟く。
おもちも、思わず拍手を送っていた。
「爆豪くん、すごいわね」
爆豪は彼女の声に一瞬だけ視線を向けた。
褒められたことが嬉しくないわけではない。
むしろ、彼女が自分の演奏を真剣に聴いていたことが、妙に気になった。
だが、素直に喜ぶのは癪だった。
「……別に、大したことねぇ」
「そうかしら?私は、もっと聴いてみたいと思ったけれど」
「……っ」
爆豪の耳が、ほんのわずかに赤くなる。
それを見逃さなかった上鳴が、にやりと笑った。
「おっ?爆豪、今ちょっと照れた?」
「黙れ、アホ面!!」
「図星じゃん!!」
「ぶっ殺す!!」
いつもの騒がしいやり取りに、クラスメイトたちの笑い声が重なった。
しかし、耳郎はそこで真剣な表情に戻った。
「ねえ、爆豪。文化祭のライブ、ドラムをお願いできない?」
その一言で、場の空気が少し変わった。
爆豪はスティックを置き、耳郎を見た。
「……は?」
「ドラムを叩いてくれたら、かなり助かる。私がギターを担当して、曲をまとめるから。爆豪のリズム感なら、すごくいい演奏になると思う」
「断る」
即答だった。
「ええっ!?」
上鳴が声を上げる。
爆豪は椅子から立ち上がり、スティックを元の場所へ放り投げた。
「他の科のご機嫌取りなんざ、やってられっか」
その言葉に、先ほどまで盛り上がっていたクラスメイトたちが静かになる。
「ご機嫌取りって……」
耳郎が眉を寄せた。
「別に、そういうつもりでやるんじゃないでしょ。みんなに楽しんでもらうために――」
「だから何だ」
爆豪が鋭く言い返す。
「俺らがヴィランに襲われて、寮に入れられて、好き勝手に振り回されて。それで今度は、他の科の連中のストレス発散のはけ口として、あいつらを楽しませるために演奏しろってか?」