第16章 雄英文化祭編
「まあまあ!それよりさ、爆豪が楽器できるなら、ちょうどいいじゃん!」
「何がちょうどいいだ」
「だって、耳郎だけじゃ大変だろ?ドラムとかできる奴がいたら、演奏の幅も広がるし!」
「そうそう!一回やってみてよ!」
芦戸が勢いよく立ち上がり、耳郎も期待を隠せない様子で爆豪を見つめた。
「……かなり難しいらしいぞ?」
と、瀬呂が挑発すると、爆豪は乗ってくる。
「……叩けるわ!!」
爆豪は面倒くさそうに立ち上がった。
その一言に、クラスメイトたちが顔を見合わせる。
「え、マジで!?」
文化祭に向けて用意された楽器の中には、簡易的なドラムセットもあった。耳郎が調整を重ねていたもので、まだ本格的な練習には使っていなかったが、音を確かめるには十分だった。
爆豪はドラムの前に腰を下ろすと、スティックを軽く回す。
その仕草は、初めて楽器を触る人間のものではなかった。
背筋を伸ばし、足の位置を整える。右手と左手のスティックを構えた瞬間、先ほどまでの面倒くさそうな雰囲気が消えた。
耳郎が思わず息を呑む。
そして。
ドンッ、タッ、ドン、ドンッ!
鋭いリズムが、共有スペースに響き渡った。
力強いバスドラムに、正確なスネア。ハイハットの刻みもぶれず、複雑なリズムを難なく叩きこなしていく。
爆豪の指先が、スティックを自在に操る。
ただ音を鳴らしているだけではない。
全身でリズムを刻み、音の強弱を使い分け、曲の流れを作り上げていく。
普段の爆豪の戦い方を知っているクラスメイトたちは、その演奏にもどこか彼らしさを感じていた。
荒々しく、力強い。
けれど、決して雑ではない。
圧倒的な技術に裏打ちされた、精密な演奏だった。
最後に、ドンッ!と力強くシンバルを鳴らす。
そして、ぴたりと音が止んだ。
一瞬の静寂。
次の瞬間、共有スペースが歓声に包まれた。
「すっげぇぇぇ!!」
「何今の!?爆豪、めっちゃ上手いじゃん!!」
「才能マンきたこれ!!」
「え、待って待って!普通にプロみたいだったんだけど!?」
「爆豪くん、すごい……!」
口々に称賛するクラスメイトたち。