第15章 死穢八齋會
やがて、治崎廻が倉庫の中央へ進み出る。
「わざわざ呼び出しておいて、随分と粗末な場所だな」
「お前が言うなよ」
死柄木が苛立たしげに返す。
「こっちはお前らの話を聞きに来てやったんだ。さっさと本題に入れ」
治崎は眉一つ動かさなかった。
「話は単純だ。こちらには商品がある。お前たちには、それを流通させるための人手と販路がある。互いに利益があるはずだ」
「商品?」
トガが首を傾げる。
「なになに? 面白いもの?」
「お前に説明する必要はない」
治崎の冷たい言葉に、トガは頬を膨らませた。
死柄木は首元を掻きながら、治崎を睨みつける。
「俺たちを利用しようってわけか。自分の組織だけじゃ手が足りないから、俺たちに汚れ仕事を押しつける。そういう話だろ?」
「理解が早くて助かる」
「……舐めてんのか?」
空気が、一段と冷えた。
彼女は壁際で、死柄木の指先を見ていた。
苛立ちが増している。
首元を掻く動作が、先ほどよりも速い。視線は治崎から外れず、足の向きはすでに攻撃へ移れる位置に変わっている。
交渉は、決裂寸前だった。
「そもそも、俺たちは誰かの下につくつもりなんかねぇんだよ」
死柄木が一歩、前へ出る。
「お前が俺たちに協力する。それだけでいい。余計な条件をつけるな」
「断る」
治崎は即答した。
「俺のやり方に従えないなら、この話は終わりだ」
「……あ?」
次の瞬間、死柄木の手が治崎へ伸びた。
「死柄木!」
スピナーが声を上げる。
だが、止めるには遅かった。
治崎の側近たちが一斉に動く。彼女もまた、腰へ手を伸ばしかけた。
しかし、その前に――
「邪魔よ!」
マグネが割って入った。
治崎の身体を押さえ込もうとしたのか、それとも死柄木を止めようとしたのか。
彼女には判断する暇もなかった。
治崎が、マグネに触れた。
ほんの一瞬。
それだけだった。
鈍い音が、倉庫に響く。
マグネの身体が崩れ、分解されていく。
叫び声すら、長くは続かなかった。