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光の裏側で、君と ※ヒロアカの爆豪寄り

第15章 死穢八齋會


「……分かりました」


返事は、驚くほど淡々としていた。
上司は彼女の顔をじっと見つめた。

「不満はないのか」

「任務の目的は理解しました。必要な情報を収集し、報告します」

「そうか」

上司は一度頷き、それから事務的な口調で付け加えた。

「君ほどの能力と経験なら、適任だろう。今後は、これまで以上に組織のために働いてもらうことになる」

その言葉を聞いた瞬間、彼女の胸の奥に、鈍いものが沈んだ。
組織のため。

適任。

必要な人材。

聞き慣れた言葉だった。

かつての彼女は、そうした評価を誇らしく思っていた時期もある。

自分の能力が誰かの役に立つのなら。 自分が動くことで救える命があるのなら。


そのために努力することに、疑問はなかった。

けれど、今は違う。
雄英で過ごした時間が、彼女の中に別の価値観を育て始めていた。

誰かと笑い、くだらないことで言い争い、失敗した仲間を励ます。

そこには、任務の成否も、組織にとっての有用性も関係なかった。

ただ、一人の人間として過ごせる時間があった。


それを知ってしまったからこそ、胸の奥に生まれた違和感を、簡単には無視できなかった。

「……一つ、確認してもよろしいですか」

「何だ」

「今回の任務で、私に求められているのは情報収集ですか。それとも、必要に応じた実力行使も含まれますか」

上司は一瞬だけ黙った。

「状況次第だ。あなたの判断に任せる場面もあるだろう」

「承知しました」

それ以上、彼女は何も尋ねなかった。


自分が、どこへ向かおうとしているのか。
本当は、分かっていた。

公安は、彼女をレディ・ナガンの後釜として扱い始めている。

彼女の能力を評価しているからこそ、表の世界では扱いにくい任務を任せる。

そう考えれば、今回の潜入も不思議ではなかった。


それでも。

――こんな形で、私はダークサイドのヒーローになるのか。


心の中に浮かんだ問いに、答えはなかった。

彼女は資料を閉じ、静かに立ち上がった。

「任務を開始します」

その声には、迷いなど感じられなかった。


少なくとも、表面上は。
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