第14章 気付き始めた恋心
「……おもちちゃん?」
麗日の声に、彼女ははっと我に返った。
「……あ、ごめんなさい。少し、思い出していたの」
「何を?」
「林間合宿のことよ」
そう答えながら、彼女は自分の指先を見つめた。
あのとき、確かに爆豪は赤くなっていた。
ただ、驚いただけかもしれない。
突然、距離を詰められたのだから。
そう考えて、これまでは特に気にも留めていなかった。
けれど。
「……そういえば」
彼女は、ぽつりとつぶやいた。
「爆豪くん、あのとき……怒らなかったわね」
「え?」
「私が突然、手を引いてしまったのに」
芦戸が勢いよく身を乗り出した。
「えっ、何それ!? そんなことがあったの!?」
「ええ。飯田くんと切島くんに見つかりそうになって、咄嗟に木陰に隠れたのよ」
「待って待って待って!」
芦戸が両手を上げた。
「木陰!? 二人きりで!?」
「……そうね」
「しかも手を引いて!?」
「ええ」
「顔、近かった!?」
「……芦戸さん?」
「ごめん、気になるじゃん!!」
耳郎が額に手を当てた。
「芦戸、落ち着きなって……」
そう言いながらも、耳郎自身も興味津々だった。
「で、爆豪はどんな反応だったの?」
「……何も」
「何も?」
「ええ。静かにしていてくれたわ。私が指を口元に当てたら、そのまま黙ってくれたの」
「…………」
女子たちの視線が、一斉に交差した。
「……それ、結構すごいことなんじゃない?」
耳郎がゆっくりと口を開く。
「だって、爆豪だよ?」
「そうだよね……」
麗日も、神妙な顔で頷いた。
「かっちゃん、普段はすぐ怒るもんなぁ……」
「しかも、おもちさんが食堂を出たことに気づいて、わざわざ探しに行ったということですわよね?」
八百万が確認するように言った。
「……あ」
彼女は、そこで初めて気づいた。
そうだ。
あのとき、爆豪はどうして自分を探しに来たのだろう。
食堂からいなくなった生徒など、自分だけではなかったかもしれない。
それなのに、彼はわざわざ外まで来た。