第14章 気付き始めた恋心
頬が、赤い。
その表情が、妙にはっきりと記憶に残っていた。
「おーい、爆豪ー!」
「どこ行ったんだよ、あいつ!」
飯田と切島の声が近づいてくる。
彼女は息を潜めたまま、爆豪を見上げていた。
爆豪は何も言わなかった。
彼女の手を振り払うことも、声を上げることもなく、ただ黙ってそこにいた。
やがて二人の足音が遠ざかる。
「……もう大丈夫ね」
彼女が指を離すと、爆豪はようやく息を吐いた。
「……てめぇ」
低い声。
怒っているのかと思った。
けれど、彼の顔はまだ赤かった。
「……」
「ごめんなさい。助かったわ」
彼女は悪びれもせず、微笑んだ。
「ありがとう、爆豪くん」
「…………っ」
爆豪は何かを言いかけて、結局、口を閉じた。
そのまま彼女から視線を逸らし、乱暴に頭を掻いた。
彼女は、彼の胸元に目を向けた。
近くで見ると、思っていた以上に逞しい。
普段は怒号ばかり飛ばしてくる彼が、あのときは驚くほど静かだった。
彼女が指を唇に当てただけで、何も言わずに従っていた。
――あの爆豪くんが。
今思えば、どこか不思議な光景だった。