第14章 気付き始めた恋心
林間合宿。
食堂に並んだ料理を前にしても、どうしても食欲が湧かなかった。
身体が重い。
思考もまとまらない。
何より、焦っていた。
個性が出ない。
自分の意思で制御できるはずの力が、まるで存在しないかのように沈黙していた。
夜風に当たり、気持ちを落ち着かせたかった。
人目のない場所で煙草に火をつける。
紫煙を吐き出しながら、乱れそうになる思考を整えていた、そのときだった。
「……おい」
背後から聞こえた声。
振り返ると、そこには爆豪勝己が立っていた。
「……爆豪くん?」
「何してやがる」
いつもの刺々しい声。
けれど、彼女が答えるより先に、遠くから別の声が聞こえてきた。
「爆豪ー! どこにいるんだー!」
飯田と切島だ。
どうやら、爆豪を探しているらしい。
彼女は一瞬で状況を判断した。
このままでは見つかる。
煙草のことも、今の自分の状態も、できれば知られたくなかった。
「……こっち」
彼女は咄嗟に爆豪の手を引いた。
「は? おい――」
そのまま木陰へと引き込み、彼の身体を自分のほうへ寄せる。
狭い木陰。
すぐそばに感じる、彼の体温。
彼女は爆豪の口元へ人差し指を近づけた。
「……しー」
静かに。
そう伝えるように、目を細める。
爆豪は、固まっていた。
いつもなら怒鳴り返してきそうな男が、目を見開いたまま、ぴたりと動きを止めている。