第14章 気付き始めた恋心
「……ねえ、ところでさ」
お菓子をつまんでいた芦戸が、ふと思い出したように顔を上げた。
「結局、轟とはどうなの?」
「……え?」
不意に名前を出され、おもちは瞬きをした。
「ほら、轟! 轟焦凍! 今日の試験でも一緒だったじゃん!」
「ああ……轟くん?」
彼女は手にしていたグラスをテーブルに置き、少し考えるように視線を上げた。
「どう、と言われても……。あまり意識したことはなかったわね」
「ええっ!?」
麗日が身を乗り出した。
「ほんまに? あの轟くんやで!?」
「ええ。大切なクラスメイトだと思っているけれど……」
「いやいやいや!」
芦戸が首を横に振る。
「それだけじゃない気がするんだよねー!」
「……どういうこと?」
彼女が首を傾げると、今まで話を聞いていた耳郎が口を開いた。
「私も、ちょっと気になってたんだよね」
「耳郎さんも?」
「うん。ほら、仮免試験に向かうバスの中。覚えてる?」
「バス……?」
「そうそう。轟の隣で寝ちゃってたとき!」
その言葉に、彼女は記憶をたどる。
「ああ……。移動中に少し眠ってしまったわね」
「少しっていうか、結構ぐっすりだったよね」
耳郎が苦笑する。
「あのとき、轟ってば、全然嫌そうじゃなかったんだよ」
「……そうなの?」
「むしろ、まんざらでもなさそうだったっていうか」
耳郎は当時の様子を思い出すように、少し視線を泳がせた。
「おもちが隣で寝ちゃって、身体が傾いたときに、轟がちゃんと支えてたじゃん。しかも、腰に手を回して」
「……!」
「普通だったら、ちょっと慌てたり、誰かに代わってもらおうとしたりするかなって思ったんだけど。轟はそのまま、すごく自然に支えてたんだよね」
「そうそう! 私も見てた!」
葉隠が勢いよく頷く。
「なんか、すっごく大事そうに支えてる感じだったよ!」
「轟くん、普段はあんまり感情を表に出さへんもんなぁ」
麗日も納得したように頷いた。