第14章 気付き始めた恋心
「整った顔立ちだけでなく、表情の作り方も魅力的ですもの。普段の落ち着いた微笑みも素敵ですけれど、心から笑ったときのお顔は、また違った印象になりますわね」
「……褒めすぎじゃないかしら」
さすがの彼女も、少し困ったように頬に手を添えた。
すると、葉隠がぴょんと立ち上がる。
「いやいや、もっと自覚して! おもちちゃんが廊下を歩いてると、男子が振り返ってるの、知ってる!?」
「……そうなの?」
「そうだよ!」
「しかも、本人は全然気づいてない感じなのが、またすごいんだよね」
耳郎が呆れたように笑う。
「たまに男子と話してるのを見ると、相手が妙に緊張してるのがわかるもん」
「……私、普通に話しているだけなのだけれど」
「それが問題なんだってば!」
芦戸が即座に叫んだ。
「普通に話してるだけで、あの笑顔と声と距離感でしょ!? そりゃドキドキするって!」
「ふふっ……」
とうとう彼女は、声を立てて笑った。
普段、教室で見せるものよりもずっと柔らかく、気の抜けた笑顔だった。
その瞬間。
「…………」
女子たちの動きが、ぴたりと止まった。
「……え、待って」
芦戸が、呆然とつぶやく。
「今の笑顔、やばくない?」
「……わかる」
耳郎が小さく頷いた。
「ちょっと、心臓に悪い」
「ええ……。今のは、反則ですわ……」
八百万まで、わずかに頬を赤くしている。
「み、みんな、どうしたの?」
彼女は不思議そうに首を傾げた。
その無自覚な仕草が、さらに追い打ちをかける。
「……ダメだ。私、今日からおもち推しになる」
芦戸が真顔で宣言した。
「芦戸さん、今日からなの?」
「今日、改めて決意したの!」
「ふふふっ……!」
またしても、彼女の笑い声が部屋に響いた。
その声を聞きながら、女子たちも次々に笑い出す。
仮免試験の緊張も、将来への不安も、今だけは少しだけ忘れて。
七人の女子たちが集まった部屋には、夜が更けていくのも忘れるほど、賑やかで温かな時間が流れていた。