【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
「はぁ…なんで制服が届くのが今日なんだろ。」
手元にある、まだ折り目の新しい紙袋を眺め、椿 15歳は重いため息をついた。地方から越してきたばかりの身にとって、この街はまだどこか余所余所しい。
「……馴染めるかな」
ぽつりとこぼれた独り言は騒がしい商店街の喧騒に飲み込まれた。ただ静かに、波風を立てず 平穏な三年間を過ごせればそれで十分だった。だが、平穏という名の希望は背後から唐突に現れた影によって踏みにじられた。
「ねぇ、今ひとり? 何してんの?」
馴れ馴れしい声と共に 肩にどさりと重い手が置かれる。振り返ると、そこには下卑た笑みを浮かべた数人の男たちが立っていた。
「……どいてください。」
「冷てぇなぁ。ちょっと遊ぼうよ」
「離してください…」
そう言って真っ直ぐに突き放すと、男達の表情から余裕が消え 粘ついた悪意が顔を出した。
「あぁ?顔がいいからって調子こいてると、痛い目見るぞ?」
身勝手な論理で絡んできて思い通りにならないと分かった瞬間に牙を剥く。その浅ましさが、はただただ不快だった。
「もう行っていいですか。」
「あぁ!?帰れると思ってんのか!?」
威圧的な怒声。同時に、乱暴に手首を掴み上げられた。ギリギリと骨が軋むような感覚に、思わず顔が歪む。視界の端で、通行人たちが足早に去っていくのが見えた。関わりたくないという露骨な拒絶。冷めた諦念が胸を支配しかけた、その時だった。
「おい。」
低く、けれど鋭く響く声が 淀んだ空気を切り裂いた。男が振り返る その動作が終わるよりも早く 乾いた衝撃音が商店街に響き渡った。
一閃。
目にも留まらぬ速さで放たれた拳が男の頬を正確に撃ち抜いたのだ。
が瞬きをする間に、先程まで彼女を組み伏せていた男は地面へと沈んでいた。呆然と立ち尽くす彼女の前に一人の少年が立つ。彼は倒れ伏した男を見下ろし、冷徹なそれでいてどこか 猛々しい笑みを浮かべて言い放つ。
「俺は――風鈴高校、桜 遥だ!!!」
その髪は、右と左で白と黒に鮮やかに分かれ、双眸は左右で色が異なるオッドアイ。異質な美しさと、圧倒的な存在感を放つその背中を、はただ、言葉を失って見つめることしかできなかった。